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カラスの『トスカ』

プッチーニ:トスカ 全曲 プッチーニ:トスカ 全曲
カラス(マリア)、ステファノ(ジュゼッペ・ディ) 他 (2002/05/22)
東芝EMI

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EMIからは、カラス、ディ・ステファノ、ゴッビ、ミラノ・スカラ座というチームで
CDが幾つか出ているみたいだ。
私の手元には『トスカ』以外に、『アイーダ』と『リゴレット』がある。
これらは皆セラフィンの指揮。
どれもすばらしい演奏で、文句のつけようがない。
特に、アイーダとアモナズロを演じるカラスとゴッビ。
父と娘というモチーフはヴェルディの作品においてはとても大きな問題だけれど、アイーダ・アモナズロほど心の奥深いところでのやり取りはその中でも際立っているように思う。

さて、この『トスカ』はサバータ指揮。すばらしい煽り方だ。
スカルピアとトスカの駆け引きの場面、
精神のぎりぎりのところまで追い詰められるトスカと、
欲望をむき出しにしたスカルピアのあの駆け引き。
心理ドラマを、カラスとゴッビは何と見事に表現していることだろう。
鬼気迫るとはこのことだ。

このチームでのEMIから出ているプロダクションの中では
間違いなく最高の作品ではないかと、個人的には思う。

段階を踏んで盛り上がっていく音楽。
とにかく、重く強く迫ってくる。
何度聴いても鳥肌が立つ。
カラスの持ち合わせた表現力はハンパじゃない。
それは、情念だ。

カラスの情念を実現する役にトスカ以上のものはないだろう。
あ、ジョコンダ、とかいうのがあるらしい。
映画にもなってるとか。
復讐の女が登場するらしい。
そういう役も、トスカにはもってこいだろう。

声も荒いし、ソプラノにしてはむしろ低め。
どすがきいていて、とにかく声が太くて、
コロラトゥーラなんかはあまり美しくないかもしれない。
高くて、澄んでいて、可愛らしくて…という条件は満たしていない。
そうだ、ちょうどネトレプコみたいな感じかな。

ドラマチックさでは、カラスを超える歌手はいないのではないだろうか。
それは、単に声の質とか技術とかによるものではないと思う。
むしろ、彼女の内面と深くリンクしているような気がする。
私は彼女をそんなに知っているわけではないけれど。
本を読む限り、そして声を聴く限りではそう思う。
彼女の歌唱は、彼女の中の情念の表れじゃないだろうか。

私はマリア・カラスが好きだ。
彼女こそ、オペラ歌手だと思う。
歌手は曲芸師ではなく、人間なんだ。
体を張って示してはいるけど、やはり内面が出るんだと思う。

オペラの中のヒロインを、彼女ほど自分の人生での体験から演じきり、歌いきった歌手は他にはいないのではないだろうか。
あれだけ波乱万丈の人生を送った彼女は、
最後はパリのアパルトマンだったかホテルだったか、
とにかくどこかの部屋でひっそりと亡くなっていたらしい。
まるで、『椿姫』のヴィオレッタさながら。

カバラドッシも好きだが、
スカルピアの悪代官も嫌いじゃない。
みんな人間だからね。
それぞれ、思うところ感じるところがあるのは当然。
トスカだって、単なる歌姫じゃない。
嫉妬深くて、男勝りで、わがままで、聞き分けのない女。
でも、それって、人間ってことじゃないのか。
かわいく、男に気に入られるように納まってる女ばかりが女じゃない!

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