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クプファー・バレンボイムの『パルジファル』@リンデン

演出 ハリー・クプファー / 指揮 ダニエル・バレンボイム
舞台美術 ハンス・シャッフェルノッホ / 衣装 クリスティーヌ・シュトロンベルク
ベルリン国立歌劇場 / ベルリン国立歌劇場合唱団 1993年
パルジファル: ポール・エルミング
アムフォルタス: ファルク・シュトルックマン
ティトゥレル: フリッツ・ヒューブナー
グルネマンツ: ジョン・トムリンソン
クリングゾル: ギュンター・フォン・カンネン
クンドリー: ヴァルトラウト・マイアー


知人が送ってくれたビデオを見ました。
バレンボイムの指揮がすばらしいですね。どう表現したらいいのか分からないけれど、
第二幕の冒頭の煽り方など、テンポも速めで、盛り上げてくれます。
そうかと思うと、聖金曜日の音楽など、ゆったりしたところも、感動的に鳴らしてくれます。
合唱もいい!!
ビデオでこれだけいいのだから、あれを生で見たらどんなにいいだろうと思います。
クプファーの演出もさすが!と思わせるところが沢山ありました。
キャスト・演奏・演出で総合すると、私が今までに見た中でダントツの一位です。

【第一幕】

聖杯領の人間たちは、みな宇宙服みたいな格好です。
背景にはメタリックな壁。レーザー光線で青や緑の光の筋が映ります。
牧歌的な森の風景などではありません。
舞台の向かって左側には大きくて、分厚い扉があります。
SF映画に出てくるような、宇宙船の扉みたいな、
見方によっては、ドイツの洗濯機の扉みたいな、
とにかく、分厚くて頑丈な扉です。
この扉の向こうからクンドリーが走ってやってきます。
ぼさぼさ頭で、薄汚い服を着ています。

聖杯城にいるのは奇怪な集団です。
男か女か分からないような、中性的な男の子が聖杯を持ってきます。
聖杯騎士たちは団子になって動いています。
聖杯の恵みを受けると、エクスタシーに酔いしれて地面に倒れます。
(聖杯の恵みを受けないと生き続けられないなんて、
まるで、フライアのりんごを食べないと元気を保てない神々みたいですね。
生命力って、そもそもそういうものではないでしょう。)

目の前で繰り広げられる光景に唖然としているパルジファルに、
いちいち注意を促すグルネマンツの演技がうまいです。
トムリンソンのグルネマンツ。こういうグルネマンツは珍しい。
聖杯騎士の長老という設定のはずですが、非常に元気もりもり。
彼の張りのある声のせいでしょう。声量もあるし。
「愚か者」を待っている暇があるなら、あなたが聖槍を奪還しに行ったらいかが?その方が早くない?
と思わずツッコミたくなります。

第一幕の最後が特徴的です。
アルトの声で神託が天上から聞こえてきます。
その時、皆が立ち去った舞台上にクンドリーが一人で現れます。
身をひきずるようにして、狂おしい姿で出てきます。
アルトの声は、もしかすると、救世主を求める彼女の心の叫びなのでしょうか。

【第二幕】

第一幕の分厚い扉が舞台の右側にあります。
アムフォルタスが横たわっていた槍のオブジェに乗って、クリングゾルが登場。
股間に聖槍を突き立てている。そこまでせんでも…笑
粘着質で、本当にイヤラシイ男です。
よくアルベリヒと比較されるキャラですが、カンネンのクリングゾルは、どちらかというとミーメみたい。
クリングゾルが欲望の象徴だとするなら、
このクリングゾルだと、欲望=ネガティブなものになってしまいます。
(個人的に、もっとセクシーなクリングゾルがいいな~。)

花の乙女たちの誘惑の場面が特徴的です。
コンピューターの世界みたい。モニターが沢山あって、
そこに、乙女たちの顔や体が映し出されます。
パルジファルはそのモニター映像に、頭の中がこんがらがって、
わけが分からなくなっています。
聖杯の世界もクリングゾルの魔法の城も、どちらも現代的な世界で
そう変わらないみたいです。
一枚の扉を隔てて、向こう側が聖杯領、こっち側がクリングゾルの城。

第二幕のクンドリーは、スケスケの衣装でセクシーです。
誘惑のシーンはオーソドックスでした。
パルジファルは母親とクンドリーを混同して、お母さん!といいながら、
クンドリーに抱きつきます。(やだね~、こんなマザコン男!)
くちづけをした時に、彼はクンドリーを押しのけますと、
今度はクンドリーが彼にまとわりつきます。
リブレットに忠実で、過激なアクションはありません。

【第三幕】

クンドリーが修道女のようになっています。グルネマンツも、もはや宇宙服めいた奇抜な衣装ではありません。聖杯領はかつてのそれとは異なっています。
クンドリーの邪気が抜けた青白い顔。第二幕の誘惑する美女とは全く別人のよう。それぞれがクンドリーの真実の姿ではあるのですが、それをマイヤーはきちんと演じ分けています。歌唱もいいですね。高音も申し分なく出ています。
香油で足を洗う場面、その後の「聖金曜日の音楽」の場面は意外にも(!)感動的でした。
終始、暗くてメタリックな舞台美術なので、最後までドライな調子で行くのかと思っていました。
大きな壁が舞台に立っているのですが、そこに青空が映し出されます。
メタリックな冷たい壁は、広大な自然の風景を映し出すスクリーンに変わるのです。
その壁の前で、地面に突っ伏して泣いていたクンドリーが頭を上げると、そこには草の芽が生えている。
罪びとが流した悔恨の涙の露となって草花に新たな生命を与える、みたいなことをグルネマンツが言いますが、ここを視覚的に示しているようですね。
その新芽を、彼女はそっと両手で拾い上げて、呆然としているパルジファルの前に差し出すのです。ここでは、彼女の方がパルジファルよりもよっぽどしっかりしている。
深い絶望と憔悴に力を失っているパルジファルを、
彼女とグルネマンツが救済の道へと導いていきます。
青空を背景に、クンドリーとアムフォルタスは二人並んで、
美しい花の野の風景を見ている。
その姿は、まるで恋人同士のようです。

三人は聖杯城へと進んで行きます。
アムフォルタスは、槍の形をしたオブジェに横たわって出てきます。
やっぱり、まだ彼は彼のまま。
やっぱり槍(!)にこだわっている。
要するに、まだ欲望のどろどろの中にいる。
彼の(やや身勝手な)苦悶のモノローク。
誰も真剣には聞いていない感じです
本当にモノローク。哀れなアムフォルタスです。

彼の中の「クリングゾル=欲望」を、バレンボイムが煽ります。
シュトルックマンは声がしっかりしているから、今にも死にそう、という雰囲気はいまひとつです。
むしろ、性欲が抑えきれず、いまだにぎらぎらしたものを内に秘めている感じ。
こういうアムフォルタスもいいと思います。リアルで。

絶叫するアムフォルタス、いよいよおしまいか、
というところで、パルジファルが出てきます。
あののんきな旋律とともに。

パルジファルは取り戻した槍を杯の上に置く。
分裂していた聖槍と聖杯を再び一つにします。
そして、アムフォルタスは地面に倒れる。彼はパルジファルとクンドリーを見つめている。
クンドリーはパルジファルとアムフォルタスを見つめる。アムフォルタスは最後の力を振り絞って、手を伸ばす。新たな救世主に、あるいはクンドリーに。はっきりとは分かりません。そして、ぐったりします。三人が三角形を形作るようにして立っているのが印象的です。

彼女は死にません。死による救済はありません(んなもんあるんかね)。
死ぬのはアムフォルタスだけ。
息も絶え絶えのアムフォルタスを見守るパルジファルの手をクンドリーが引きます。そして、二人で別の世界に行こうとします。
パルジファルは肩を震わせるようにして泣いています。
アムフォルタスの死に、何かを強く感じているようです。

最後には、パルジファル、クンドリー、グルネマンツの三人が正面に向かって立っている。そして、カーテンが下ります。
三人は聖杯城には残りません。
カーテンの前に立っているのです。
自分たちの住む世界ではないと思ったのでしょうか。
ただ、クンドリーとパルジファル二人なら納得だけれど、そこにグルネマンツがいるのが分からない。
どういうことなんだろう…。
ちょっと考えてみます。

とりあえず、ざっと感想まで。

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