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トーマス・マン『リヒャルト・ヴァーグナーの苦悩と偉大』

講演集 リヒァルト・ヴァーグナーの苦悩と偉大 他一篇 講演集 リヒァルト・ヴァーグナーの苦悩と偉大 他一篇
トーマス マン (2003/05/16)
岩波書店
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トーマス・マンの二つの講演を収めたもの。
作家であり文学者である彼がワーグナーのオペラに対して、
そしてワーグナーその人に対して、
いかに深い理解と愛情を抱いていたかをうかがい知ることができます。

この著書は個々の作品の内容よりも、作品の背景や、作品と作曲者自身の関係についてに重点が置かれています。
『トリスタン』については特に熱がこもっています。
また、マンはジークフリートを「時を越えた人物」と絶賛してもいます。
確かに、ワーグナーもそういう人物を理想として着手したのも事実でしょう。
しかし、ジークフリートって、そんなに立派な人なのでしょうか。
天真爛漫なのはよいですが、男としてどうなんでしょうね。

昨今の演出では、ジークフリートをいかにも立派な「英雄」として演出することはむしろ稀かもしれません。
彼を完全にパロディ化してしまう演出も珍しくはないでしょう。
これも時代の潮流、いつかはまた反動でジークフリート万歳といった演出も出てくるのかもしれません。

「ヴァーグナーの天性もまた一方では暗い衝動と苦しみ多き権力意志ならびに快楽への意志、そして他方では論理的浄化と救済を求める衝動とが合体し、情熱と静穏への意志が合体してできている天性でした。」

マンの主張はこの点から出発し、この点に帰ってきます。
これこそがヴァーグナーのオペラのテーマでしょう。
『トリスタン』も『タンホイザー』も『パルジファル』も、
ひいては『マイスタージンガー』にも『ローエングリン』にもつながるかもしれません。

そして、ヴァーグナーの場合、台本は文学なのではなく、音楽そのものが文学なのだとマンは解釈します。
ヴァーグナーの作り出す奇跡の音は、「響きも色鮮やかな深淵」なのだと。

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